2015.1.12-2015.1.24■バランスのとり方 石川丘子 谷口嘉 奈良田晃治

■展覧会に
 ついて


ニューバランス

平田剛志 (京都国立近代美術館研究補佐員)


バランスはつねに他を必要とし、複数の関係性によって成立する。
「バランスがいい」などと言うとき、それは他のものごととの状況や
関係性を踏まえた意味である。そもそもバランス(balance)の語源
は、「二つのお皿」「天秤」を意味し、どちらかに偏らない均衡が求
められるのだ。
展覧会もまたバランスの産物である。今展は、石川丘子(木版画)、
谷口嘉(ガラス)、奈良田晃治(絵画)の3人展である。ジャンルが異
なる3作家だが、共通するものがあるとすれば、「気」かもしれない。
石川丘子は木版画によってキワ、境界線の探求を行なっている。山や
雲、川の境はどこにあるのか、姿形を変える捕えがたい景色=気色が
淡い色彩の階調から浮かび上がる。ときに山水画を思わせる神韻とし
た奥深さ、ドローイングの鮮烈なタッチも魅了される。
谷口嘉はガラス素材の脆性と硬度、液体と固体という対極的な特徴を
用いた立体、インスタレーションを展開する。バランスの視覚化とも
いえる繊細な空間を支配する緊張感は、フラジャイルなガラスと人と
の関係性がつくる気配なのかもしれない。
奈良田晃治が描くのは、森や農場など旅のプロセスで出会った風景で
ある。それは非日常的な光景ではなく、人のかたわらにあって過ぎ去
るような名もない景色である。近年は、アクリルから油彩の古典技法
へと変わり、描きだす土地の雰囲気、記憶が積み重なる色層を形成
する。
異なる「気」を表わす三者三様の世界はギャラリー空間にどのような
空気をつくりだすのか。1人ではなく、他者と関わることで生まれる
バランスの可能性を見たい。


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2015年の2kwgalleryは2kw変電所計画―バランスのとりかた―ではじまります。

奈良田晃治企画による今回の展覧会は

異なる技法の三人が、それぞれの素材で作り出すリズムが

どんなバランスを生み出すのか、それが楽しみになっています。

彼らが提示した「バランスのとりかた」は

偽らざる世界の在り方です。

               2kwgallery

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石川 丘子/ISHIKAWA Takako

1981 埼玉生まれ
2004 多摩美術大学 絵画学科版画専攻 卒業
2006 多摩美術大学 絵画研究科博士前期過程 修了
2013 中国美術学院 版画科大学院 修了

【個展】
2011 ここのむこう側(トキ・アートスペース/東京)
2012 i was wondering about strange cloud 石川丘子展
   (トキ・アートスペース/東京)
【グループ展】
2013 Visual Sensation vol.5(gallery Den mym/京都)
2014 和紙に描く(トキ・アートスペース/東京)

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谷口 嘉/TANIGUCHI Yoshimi

1978 神奈川生まれ
2001 多摩美術大学 デザイン科立体デザイン専攻
クラフトデザイン専修ガラスコース 卒業
   あづみのガラス工房勤務(〜06)
2006 多摩美術大学工芸学科ガラス研究室助手

【個展】
2013 谷口 嘉 展(2kw gallery/大阪)
2012 谷口 嘉 展 -画廊からの発言-新世代への視点2013(ギャラリー現/東京)
【グループ展】
2012 「手がかり」展(le bain MITATE/東京)

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奈良田 晃治/NARADA Koji

1982 大阪生まれ
2006 大阪芸術大学 芸術学部美術学科 絵画コース 卒業

【個展】
2012 森のことを呟く(2kw58/大阪)
2013 天気の悪い日(2kw gallery/大阪)
2014 風景の湿度(2kw gallery/大阪)
【グループ展】
2013 Visual sensation Vo.5(Galley Den mym/京都)
2014 膜をほどこす(橘画廊/大阪)
   Doppel Pack(海岸通ギャラリーCASO/大阪)